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三菱商事損失事件から考えるトレーダーを守る為のミドルオフィスというお仕事について 

猫バスFX

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三菱商事のシンガポールにある子会社でデリバティブ取引により約345億円の損失が発生した。
三菱商事子会社でデリバティブによる約345億円の損失が発生

中国籍のトレーダーがナフサでの取引で損失隠しを行っていたという。 
商社では過去にも住友商事が銅取引で約2,600億円の簿外取引による巨額損失事件を起こすなどしている。 

その他にも金融機関では
英ベアリング銀行(1995年/約1,600億円)
大和銀行(1995年/約1,100億円)
UBS銀行(2011年/約1,540億円)
仏ソシエテ・ジェネラル(2008年/約7,600億円)でもトレーダーによる損失隠しによる巨額事件が起きている。

ベアリング銀行については一人のトレーダーが銀行を破綻に追い込んでおり後に映画化された事でも知られている。
(「マネートレーダー銀行崩壊(Rogue Trader)」) 

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今回の三菱商事子会社の損失額というのはこれらと比較すれば小さく感じるかもしれないが、通常のYマダ電機の1年間の純利益程度が消えてしまったことを考えれば大きな問題である。

よくリテールの銀行員が客のお金を横領してFXで損したなどのニュースを見る機会があるのだが、今回の様なトレーダーによる損失隠し事件は様々な社内規定(デリバティブ管理要綱、ポジション管理要綱など)の下でトレーダーを監視する専門の社内組織や、毎年実施される細かな社内監査など組織による十分な管理体制の下でトレードが行われており、それでも起こってしまったという点では根が深い問題であると思っている。 

当然の事ながら過去のこうしたトレーダーによる損失隠し事件はデリバティブを行う企業ならどこでも承知している事であり対策も講じてきているはずである。 そうした事件を背景に改善されているはずの社内管理体制が脆くも一人の人間によって盲点をつかれる結果となったのだ。 

通常大手の企業になってくるとトレーダーを監視するミドルオフィスは10~20名体制で行われている他、ポジション管理システムを備えており、所管の省庁へ提出する為の資料を毎日作成し、規定された期間は保管を義務付けられている。 

また、トレーダーもビジネスプラン表を作成し、デリバティブに関して取り組む内容は簡潔にまとめられている。 現物取引に紐付かないペーパー取引については損切り額を事前に決め、ミドルオフィス責任者の承認を受ける事となる。 ミドルオフィスも当日行われた全ての取引内容については先のビジネスプラン表や各トレーダーから指示された名目でポジション管理システムへ細かく入力され、翌日にはそのデータを基にポジション管理システムによりポジション管理表が作成され、全経営陣も確認できる仕組みとなっている。 取引の翌営業日には取引所やブローカーからバックオフィスに全取引内容や証拠金額などのデータが送られミドルオフィス、バックオフィスによる二重のチェックが行われるのである。 

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私も商社に在籍していたが、商品先物取引とは現物取引に紐付くヘッジ取引と現物には紐付かないスペキュレーションに大別できる。現物に紐付くデリバティブ取引であれば実際にどの現物取引を指しているのか先のビジネスプラン表の他、実際にやり取りされたオーダー表や請求書などとも照合させ現物の取引が実在していることの確認はできる。 また、ビジネスプラン表でトレーダーが作成したプラン内容について、それが果たして本当に現物取引に対するヘッジ(保険)効果が可能なのかどうかの検証は常に必要である。 現物取引のヘッジ行為と称して実態はただのスペキュレである可能性も考えられる為である。

この二つの種類の先物取引というのは現物に紐付こうが紐付かないであろうが外から見れば同じ先物取引であるが、この2つは明確に分けて管理しなければトレーダーの嘘を許してしまう事になりかねない。 現物に紐付くヘッジ行為であるならば現物の取引で損益が+100であればヘッジは保険行為なのでデリバティブではマイナス50でトータルで+50となる。その為先物取引だけを見てしまえばマイナスのポジションとなるが、現物がプラス採算だから全く問題がないのである。 一方で現物取引に一切関係しないデリバティブはどうか。 これは現物取引に紐付かない以上はダイレクトに採算に直結してしまう。マイナスはただただマイナスなのである。 これは言い訳が聞かない世界である。 つまりこの2つの先物取引というものは全くの別物なのだ。 

その為、実際に管理するミドルオフィスに関してはまず現物取引に紐付くデリバティブを特定させ、その上で残りの肝心な現物取引に紐付かないスペキュレーションについてしっかり管理を行わなければいけないのである。

まず現物取引に紐付かないスペキュレに関しては実際にトレードした人物を全取引について必ず特定できる様に管理しなければならない。 以降の評価額の変動の際にもどのトレーダーが行ったポジションの評価が悪化・改善しているのか把握・管理を行う。日々自分のポジションやその評価額を気にしないトレーダーに私は会った事がない。その為自分のポジションに違和感があればミドルオフィスと連携し合い、都度証拠資料を基にトレースし正確なポジション修正する必要がある。これに関してもトレーダーがポジション管理システムにアクセスするのではなく、ミドルオフィスだけが修正できる権限を持ち業務遂行する必要がある。  

私は今回の事件の原因として以下の推測をしている。 記事を見ている限りでは何もヒントがないし、外部の者なのであくまでも推測の域は超えることができないのであるが・・ 

・トレーダーが自らポジション登録を行っていた可能性。 これであれば上記のような言い逃れができてしまう。つまり現物取引のヘッジで行っているのであれば先物取引では損失が出ていてもそれに紐付く現物取引の評価はプラスになっているのでこの先物取引における損失は正当化できてしまう。 これも証拠資料まで遡り検証すれば分かる事であるのだが、毎日膨大な数の取引を行っている為、日々のポジション管理段階では言い逃れができてしまう可能性が高い。   

・現物取引に紐付くヘッジ取引とスペキュレーションとが明確に分かれて管理されていなかった可能性。 

・現物取引に紐付くヘッジ取引の現物取引とのヘッジ効果の検証が後手に回っていた可能性。場合によってはスペキュレーションがまぎれていた可能性。  

・子会社のポジション管理を親会社はデイリーでは把握していなかった。若しくは見過ごしていた可能性。 管理も四半期や半期、年間でしか管理していなかった可能性も考えられる。

・子会社のポジション管理規定と親会社の規定がそもそも異なっていた。また管理システムが異なっていた可能性。 もしもそうであればやはり同一のものにする必要がある。

・子会社ではトレーダーがミドルオフィスを兼ねていた可能性。 少ない人員でデリバティブを行う組織ではそうした事も想定できる。しかし、これでは一時的には何でもありな状態になってしまう。 性善説に基づくデリバティブってやつ。   

私はミドルオフィスという仕事はとても大切な仕事であると思っているし、ミドルオフィスが正常に機能する事がデリバティブを実際に行っているトレーダーを守るのだと信じている。  

誰だって好きで損はしない。もっというと会社に大きく貢献したいし、部署内でも業界内でも大きく稼いで有名なトレーダーとして知れ渡りたい。 だけど人間は弱いから逆に損失が膨らんでしまった時に隠そうと考えてしまう。また、日々の業務を通じてデリバティブ管理の盲点が見えてしまうこともある。そうしたことが人間の弱さから隠そうとの思いに繋がるのだ。 
その様な人間の弱さは誰にでもあるし全てのトレーダーに起こりうる問題であることを前提として、会社は性悪説に基づいて管理体制を整えるべきだと常々思う。 ミドルオフィスの使命はポジション管理を通してトレーダーを守ることだ。 

会社に貢献したいと考えて日々情報収集し、分析し、取り組むトレーダー達をしっかり守る為にもミドルオフィスが正常に機能する仕組みの再構築、再度見直す努力をデリバティブを行う企業には改めて徹底して取り組んでもらいたいと思いバス。  



Twitter 猫バス@FX

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